娘の育児思い出しながら…岡村孝子(4)
読売新聞 2015年10月16日
チワワのりりぃは、昨年4月に我が家にやって来ました。子犬を育てるのは、以前飼っていたハッピー以来、十数年ぶり。でも、トイレのトレーニングや、「お手」や「おすわり」を覚えさせるのに、こんなに根気が必要だったっけ?と感じることもあります。
りりぃは、ハッピーの子犬時代の数段上を行くやんちゃぶり。トイレを失敗したり、スリッパをガジガジしてぼろぼろにしたり。いつになったらきちんとしつけられるのだろうと思う時もありましたが、全く苦にはなりませんでした。
むしろ、粗相したりりぃを雑巾片手に追いかけたりして、ヨレヨレになるほどふり回されることに、幸せを感じています。
ただ、ハッピーを飼い始めた当時、まだ4歳だった娘は、ハッピーもいろいろ失敗をしながら成長していったことを覚えていないようで、りりぃのお世話で少々げんなりしていたようですが……。
りりぃを見ていると、娘が小さかった頃を思い出します。
笑った。はいはいができるようになった。「ママ」って呼んでくれた。一つ一つがうれしくて、誰よりも自分が一番最初にそばで見たくて、夢中で子育てをしていた時と同じ気持ちになってくるのです。
娘は、私や周りの人たちに教えてもらいながら、お箸でご飯を食べたり、洋服を着たり、しゃべったりすることができるようになっていきました。「みんな、誰かに支えられて成長するんだなあ」と思ったものです。
成長するりりぃを見ていると、娘が小さかったころを思い出して、懐かしくなります。
そしてもう一つ、育児と似ているなあと思うのは、頻繁にお医者さんにかかること!
私自身のことだったら、体調がちょっとくらい悪くても、少し熱があっても、休んで気合で治そうと思うのですが、小さな子どもや犬はそんなわけにはいきません。しょっちゅうケガをするし、ちょっとした精神的なストレスでも具合が悪くなるし、急に体調を崩すこともあるので、よく病院に駆け込みます。
闘病中の不幸な事故で亡くなったハッピーのような悲しい思いを繰り返さないように、近所を散歩している途中で見つけた新しい獣医師さんには、本当にお世話になっています。
母やスタッフ、ママ友に手伝ってもらいながら娘を育てたように、りりぃも、周りのたくさんの人たちに助けられながら成長してきました。
高校生の娘と、まだ小さいりりぃのために、自分も健康に気をつけて頑張ろうと思っています。(おわり)
おかむら・たかこ
シンガー・ソングライター。1962年、愛知県生まれ。82年に「あみん」としてデビューし、85年にソロ活動を開始。9月27日には、11月以降に取り壊される渋谷公会堂(東京)で、コンサート「T’s GARDEN~渋谷公会堂 FINAL~」を行った。
東京都内で(池谷美帆撮影)