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虹のパレット:気付けば娘も大人に


 虹のパレット:気付けば娘も大人に

               毎日新聞 2014年10月20日 地方版

 少し前までは、何をするにもべったり一緒だった娘が、最近ちょっと違う。

 こうありたいと思う自分に近づくべく自分をプロデュースする……とでも言いましょーか、ま、単純に大人になったなあと思うことが多々ある。

 いろいろと手伝ってくれるし、教えてくれるし、将来について私の100倍考えたりしている。

 そしてある日、不意に「ママ、そろそろ再婚していいよ!」とOK宣言が出た。

「『え!? ママが取られちゃうから、絶対に嫌!』って小学生の頃は言ってたのに?」と言うと、「そうやって誰かのために自分の人生を犠牲にした、みたいなのは重いんだよね……」だとさ。

 だけど、「大学生になるまでは誰にも頼らず1人で育てあげるって決めてるんだあ」と言う私に「その『1人で頑張る』っていう考え方がいけないの、何で頼っちゃわないの?」ときた。

 思えば娘が5歳の時に、新天地で娘と2人、新たな人生のスタートを切ってから12年。

 引っ越し1日目、近所の総菜屋さんから帰る途中、冬の空に瞬くたくさんの星たちを見上げて、つないだ娘の手のぬくもりを感じながら、すごく不安なはずなのに、なぜか同時にとても希望に満ちている自分に気付いたっけ。

 一生懸命、頑張っている子供を抱えたシングルマザーの親子に、世の中ってこんなにえげつのない言動を浴びせるものなんだと、ひざを抱え、さめざめと泣いた日々や意外と身の回りに小さな幸せがあふれていることに気付いたこと、ご近所の方の差し伸べてくれる温かい手に心がじ〜んとしたこと。気付けば12年の歳月が流れていました。

 寂しい思いをさせないように、両親もスタッフもみんなで愛情を注いでくれ、小さい時はスタッフも一緒に泊まりがけでディズニーランドに行ってくれて、足が動かなくなり座りこんでいる私に代わって娘とキャラクターを追いかけてくれたこともあったし、たくさん思い出を作りたくて、毎年、温泉やハウステンボス、海外旅行などいろいろな所に行き、アルバムを楽しい写真でいっぱいにしたり。

 ふり向く暇もない日々に、自分の選択を後悔したことなど一度もなかったというか、何だか楽しかったなあ。

 でも娘からすると、ほわ〜んとしている私のことが危なっかしくて心配でたまらないらしく、自分が自立していった後、頼りない私が足手まとい?らしい(エヘヘ)。

 さりとて、あの頃の徹底的に分かり合えないむなしい思いや、近くにいるのにとてつもなく遠かった孤独の日々を思うと、もう二度とそこへは行きたくないな……とすくんでしまう。幼いながら、そんな空気の中にいた娘は、すべてを記憶し、結婚願望がゼロなのだと言う。こりゃ、まずい。きっとそんなことないよ。

 私の両親も、きっと若い時は、いろんな事があったんだろうけど、年をとって仲良く、孫と過ごす時間を楽しみに我が家へたびたび訪れてくれた。

 父の闘病中は母をとても頼りにし、いつも母が寄り添い、「あ〜、夫婦っていいもんだなあ」ってつくづく感じたりもしました。

 これからは娘が「やっぱり誰かと共に歩いて行くのっていいなあ」って思えるように、私もお手本を見せなくちゃいけないのかもね。とは言え、1人に不自由を感じたことが一度もなかったし……。困ったな。

 「ナイナイのお見合い大作戦」に応募してみましょーか。(シンガー・ソングライター)




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