忍者ブログ

   

虹のパレット:30周年イヤー楽しもう!


    虹のパレット:30周年イヤー楽しもう!


                                                 毎日新聞 2015年11月23日 地方版

 ソロデビュー30周年イヤーに突入しております。「あみん」を入れると33年。

 初めは淡々と、いつもと変わりなく目の前の事をこなして行こう!と思っていたのですが、「これってすごいことじゃない?」と気付き方針変更。長く歌ってこられたことに感謝しつつ、思いっきり30周年イヤーを楽しもうと思ってます。だって40周年の時、元気かどうかわからないし……(笑)。

 思えば長いこと音楽を好きでいられたなあと感心します。そりゃ、曲がなかなか書けずにアルバムの締め切りに追われ、「もう、やめたい」と思ったことも幾度となくあったし、物を創る責任上、たくさんの人と出会い、若い頃は真面目に受け止めすぎる性格ゆえに傷つくことも数えきれないくらい(その逆もあったのであれば、ゴメンナサイ)。

 そんなガラスの20代、30代(40代)を経て、今や、さっきした会話すら「忘れちまったー」な、おめでたい50代の私。今ここにいられるのは、何かにへこむたび、気持ちを前に向かせてくれたり、物を創るのって楽しいねーと思うような、「HAPPY」をたくさんくれた周りの人たちのおかげです。

 小さい頃、「ピアニストやピアノの先生になりたい」という、漠然とした夢を持っていた私が言の葉の面白さに気付いたのは16歳の時。伯父がくれた辞典がきっかけです。伯父は進学校で数学を教える教師。小学6年の夏休みに、親友3人と共に電車を乗り継ぎ、他県の母方の祖父母の家に何泊か泊まりに行ったことがあります。その時、伯父は私たちを昼間は渓谷に連れて行ってくれて、くたくたになるまで川遊びをさせてくれました。そして夜になると部屋に長い机を置き、そこで夏休みの宿題のドリルをみんなに解かせて、きっちり勉強タイム。祖母の手作りのちらし寿司(ずし)を食べ、昼寝をした後、スイカを食べたこと。夜、布団を並べて寝ながら「林間学校みたいだねー」と友達と話した、あの夏の日を今でも覚えています。

 そんな厳しくて温かい伯父が、私が高校に受験で合格した時、大変喜んでくれてお祝いにくれたのが「故事成語辞典」と「ことわざ辞典」。「孝ちゃん、お休みの日とか、一日中ページを繰ってなさい。世界が広がって面白いよ」と伯父はイタズラっぽい笑顔を浮かべました。お祝いだから、もう少し勉強から外れたものでも良いのに……と少しがっかりしましたが。パラパラと暇な時に見ているうちに、まんまと伯父の策にはまり、言葉の持つ奥深さのとりこになってしまいました。

 なぜ、数学教師の伯父が「言葉」を私に選んでくれたのかは分かりませんが、あの時、あの辞典をもらっていなかったら私は歌詞を書くこと、シンガー・ソングライターになることに興味を持たなかったのでは?と思います。夢を見つけた16歳。

 30年近く一人歩きを続けるたくましい“子供”「夢をあきらめないで」が今、カロリーメイトのCMソングとして使われています。澄んだ瞳の平祐奈さん、カバーしてくれているAnlyさん、黒板アートの学生さんも(そして、うちの娘も)、みんな、ちょうど私が夢を持ち始めた10代半ば。伸び伸び、すくすくと夢に向かって歩いて行ってほしい、と思います。

 そして、私もまだまだ頑張りますよー。30周年だもん。(シンガー・ソングライター)

==============

 ■人物略歴

 ◇おかむら・たかこ

 1962年愛知県岡崎市生まれ。椙山女学園大学在学中に同級生の加藤晴子さんとデュオ「あみん」を結成し、82年に「待つわ」でデビューした。85年にソロデビュー。87年に発表した「夢をあきらめないで」はロングセールスを記録した。10月にソロデビュー30周年を迎えた。12月22日に名古屋・ダイアモンドホールでコンサートを予定。




PR