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虹のパレット ~体育祭のドラマ~


虹のパレット:体育祭のドラマ=岡村孝子 /愛知
毎日新聞 2013年10月21日 地方版
 10月のとある快晴の日曜日。娘の学校の体育祭に行ってきました。今年、高校生になったのですが「もう親は運動会を卒業ね」という感じではなく、この学校は中学から高校に進級しても、両親そろって見に来る家庭が割と多いのです。
 うちの場合、シングルマザーである上、仕事で家を留守にすることが多く(特に今年は例年よりツアーが長かったため4日間続けて留守になることもありました)、名誉挽回とばかり「体育祭は絶対に参加するぞ!」と決めてスケジュールを確保しておいたのでした。
 昨年は母と2人で行ったのですが、椅子の席取りに敗れて立ちっぱなしで疲れてしまったため、今年は何と弟まで駆り出しました。弟は難なく席を三つゲットしてくれて、前から2列目で座ってゆっくり見ることができました。弟よ、わざわざ愛知からありがとう。楽ちんでした。
 運動会日和の秋晴れの空の下、これぞ体育祭といった感じで、リレー、綱引き、棒倒しなどが繰り広げられていきます。すると、どこからともなくキンモクセイの香りが漂い、運動会にまつわる昔の思い出がよみがえりました。
 自分が小学生の頃、忙しい中、時間を作って見に来てくれた両親と共におにぎりを食べたこと。娘がまだ幼稚園に通っていた頃、愛知から駆けつけてくれた私の両親を伴い、お弁当とピクニックシートを持って見に行った運動会。おじいちゃん、おばあちゃんの前で演技を立派に終えた後、誇らしげにこちらに向かって手を振っていた娘の笑顔−−。運動会って、競技する側ばかりでなく見る側にもドラマがあるんだなあ、なんてしみじみ。
 さて、この体育祭、中学・高校6年間の集大成というべき高校3年生の伝統あるダンスは、かなり見応えのあるものになっています。
 演技する3年生の神妙で凜(りん)とした姿。それを見守る中1から高2の生徒たちの真剣なまなざし。
 途中で「この体育祭を最後に私たちはそれぞれの未来に旅立っていきます……」というようなアナウンスが入ると「体育祭が終了すると本格的に受験勉強が始まって、友達と肩を並べて勉強する生活も本当に残り少なくなっていくんだな」とか「こうして力を合わせて一つのものを全員で作りあげる体育祭は今日が最後なんだな」と思い、娘が中学に入学して初めて見た体育祭の時、不覚にも、もらい泣きしそうになったことを思い出します。

 ダンスを終えて退場していく生徒たちの何人かが涙をぬぐっていたり、保護者席でビデオ撮影している高校3年生のお母さんたちがハンカチを目にあてたりするのを見つめながら「2年後には私もそんな立場になるんだなあ。いろいろ親として感じさせられることの多い学生生活だけど、体育祭を見るのも、あと2回なんだ」なんて感傷的になりました。
 音楽に浸る日々とは、また違う意味で心の琴線を揺さぶられた秋の日の出来事でした。青春っていいものですね。(シンガー・ソングライター)
     ◇
 「虹のパレット」は月曜日に掲載します。次回は瀬木直貴さんです。
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 ■人物略歴
 ◇おかむら・たかこ
 1962年、愛知県岡崎市生まれ。椙山女学園大学在学中に同級生の加藤晴子さんとデュオ「あみん」を結成、デビュー曲「待つわ」は82年のヤマハポピュラーソングコンテストでグランプリに。85年にソロデビュー。87年に発表した「夢をあきらめないで」はロングセールスを記録した。今年3月にアルバム「NO RAIN, NO RAINBOW」をリリース。12月22日に東京・渋谷公会堂でコンサートの予定。
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