岡村孝子 2016/06/26 虹のパレット . 夜の散歩で「謎の生物」に再会 虹のパレット 夜の散歩で「謎の生物」に再会 毎日新聞2016年5月16日 5月のとある日のことです。夜、辺りがすっかり暗くなったころ、娘と愛犬りりぃの散歩をしていると近所の道で謎の生物に遭遇しました。 やって来たその生物は、何と言いましょうか、チョコボールのパッケージに描かれている「キョロちゃん」のようないでたち、バレリーナのような優雅な足取りで、こちらに向かってくるではありませんか。頭の後部にはひとかたまりのアンテナのような毛が飛び出ていて、黒っぽいグレーと白の体。全長60センチ前後でしょうか。 そいつは手の届くほどの所まで来ても、人間に全く動じることなく知らん顔でツンと通り過ぎようとするのです。思わず「え〜!? 何? 何?」と声を上げても無視。側にいるりりぃの目に映っているのか、いないのか、吠(ほ)えもせず知らん顔。娘も「え!? ペンギン!? 何?」とびっくり。前から来た会社帰りの女性はニコニコしながら「かわいい〜」としばし立ち止まり、水辺の草むらに入ってしまうまで、3人で不思議な時間を共有していました。 あっという間の出来事に興奮さめやらずの私。止まっていた時間が再び動き出し、いつもと変わらない道に戻っていくのですが……。それにしても私たちの前後には、少し離れてたくさんの通行人がいたのに、目撃した私たち以外は誰も気付いてないのか、はたまたここではよくあることなのか……。 そして「あっ」と思い出したのが、3年前、ここに引っ越して来たばかりの出来事。ある月明かりの夜、帰宅が遅くなった娘を駅まで迎えに行くことにしました。8時を過ぎていたでしょうか。家路を急ぐ人や近くの学校の部活帰りのにぎやかな女子高生の集団が遠ざかった後、突然霧がむわ〜んと立ち込めて辺りを包み込みました。 「あれれ、前が見えないや」と思ったその時、霧の中から突然、目の前に現れた変な生き物。キョロちゃんのような……ペンギンのような物が気取った歩き方ですれ違っていきます。口をあんぐり開けて「え〜!? トトロ?」と驚く私のことなど、おかまいなしに、しゃなりしゃなりと。 慌てて携帯を取り出し後ろ姿を撮影しましたが、ぼわ〜っとした影が映るのみ。たまたま、もう1人霧の中に入り込んでしまった通行人のおじさんも「あ〜、びっくりした〜」と携帯を手に追いかけますが、木の茂みの中に、フッと消えてしまいました。途端に霧が晴れ、再びガヤガヤと人が行き交います。 キツネにつままれたような出来事を、家で母と娘に説明するも全く信じてもらえず。「誰かの飼っているペンギンが散歩しているんじゃないの?」とか「リモコンで動くおもちゃじゃない?」とか。あまりしつこく言っても疲れておかしくなったんじゃないかと疑われそうで。じっと封印していましたが、私は正しかった。確かに、そいつは存在していました。 今回は娘も一緒に遭遇しているので、2人で必死に調べたところ、ありました。見たものと全く同じ画像が。何と“ゴイサギ”という鳥のようです。 そういえば、この歩道はシラサギやカモなどをしょっちゅう見かけます。ベランダにシラサギが止まっていたことも。都会なのに、のどかでしょう? トトロじゃなかったのは残念ですが。 この道、いろんなものに遭遇するんですよね。何年か前は、お友達(ムフフ)と歩くツアー仲間のギタリスト坪井さんとバッタリ出くわしました。次は一体どんなものに出会うのでしょう。恐竜か!?(シンガー・ソングライター) ■人物略歴 おかむら・たかこ 1962年愛知県岡崎市生まれ。椙山女学園大学在学中に同級生の加藤晴子さんとデュオ「あみん」を結成し、82年に「待つわ」でデビューした。85年にソロデビュー。87年発表の「夢をあきらめないで」はロングセールスを記録した。渋谷公会堂で昨年行ったライブを収めたブルーレイ「ENCORE8」を発売中。6月18日に愛知県の幸田町民会館でコンサートを予定。 PR