岡村孝子 2016/11/09 虹のパレット 娘とガールズトーク 虹のパレット 娘とガールズトーク 毎日新聞2016年10月31日秋の夜長。 みなさん、楽しんでいますか? 私は娘とのひとときを満喫しています。今年に入り、高校を卒業し、自分の時間を持てるようになった娘ですが、こんなに話すことが尽きないなんて……というくらい、ガールズトークしてます。時には枕を持って私の布団に遊びに来たり、ベランダに出て星を眺めて過ごしたり。 こういう瞬間を共有したい……というのは、娘がおなかに宿った時からの夢だったので、「あ~、やっとここまでたどりついたんだな~」としみじみしています。 そろそろ、お年ごろの娘とは、お化粧の仕方を話したり、ファッションを楽しんだり(色違いのおそろいのダウンコートを着て、もうすぐ旅行に行くのです!)、恋話(こいばな)をしたり。 高校生の頃。ボーイフレンドと初めて映画に行き、怖い映画なら、どさくさに紛れてくっつくことができるかも……と、「サスペリア」にしたら怖すぎて気持ち悪くなり、それどころじゃなかったこと。 手もつなげずに自然消滅してしまったボーイフレンドにもらった、可愛い人形を実家のベッドの棚に大事に飾ったまま、東京に出て来て数年後、帰省したら、しっかり母に処分されていて、淡い思い出があっけなく消えてしまっていたこと、など当たり障りのない話をして寝ようと思った時、突然、「なぜ、結婚をしたの?」と聞かれました。「う~ん。なぜだろう?」 30歳の時、一生独身かと覚悟を決め、マンションと家具を購入し、愛犬と暮らしていましたが、34歳で結婚。そこにそのまま住んだので、お嫁に行った感がないままだったし。 短い結婚生活は「世の中に、こんなに考え方の違う人間っているもんなんだ」と思い知らされ、アイデンティティーや自信を喪失する日々だったのです。うまくいかなかった理由は、たくさんあげられるのですが……。(よく聞かれるのですが、私は借りているものも、背負っているものも1円たりともないのです) 15年前、結婚生活にピリオドを打ち、シングルマザーになろうと決める時、なかなか一歩がふみ出せず、ベッドでさめざめと泣いている私の頭をなでて、たった4歳だった娘が「私がいるじゃない」とにっこり笑顔を見せて背中を押してくれました。いつもそばで見ていて娘も感じるものはあったのでしょう。 強いて答えを見つけるとすると、娘と出会うためだったのかなあ……。娘は「夕日がきれいだね」とか「溶けそうな大きい丸い月を見ると古里を思い出すネ」「雨が降る前の風の匂いが好き」。そんな小さな幸せや一瞬を分かちあえる同じ感覚を持ってくれています。そして、娘も将来そんな同じ感覚を共有でき、お互いの感性、価値観を認め合えるパートナーと出会えるといいな、と思います。 以前、この「虹のパレット」でも触れたので割愛しますが……。うわさや先入観ではなく、本人をしっかりと見てくれるすてきな人と出会えますように……。そして私にもすてきな出会い、あるといいな。 秋の夜は深いな--。(シンガー・ソングライター) ■人物略歴 おかむら・たかこ 1962年愛知県岡崎市生まれ。椙山女学園大学在学中に同級生の加藤晴子さんとデュオ「あみん」を結成し、82年に「待つわ」でデビューした。85年にソロデビュー。87年に発表した「夢をあきらめないで」はロングセールスを記録した。渋谷公会堂のメモリアルライブを収めたブルーレイ「ENCORE8」、ソロデビュー30周年記念ベストアルバム「DO MY BEST 2」発売中。12月20日に名古屋市芸術創造センターでコンサートを予定。 PR