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短い命いつも一緒に...(2) 読売新聞


      短い命いつも一緒に...
(2)
        
                          2015年10月02日 05時20分


 ソロデビューして8年目、30歳を迎えた1992年。
「もしかしたら私は、一生独身かもしれない」と思い、一人で生きていけるようにマンションを購入。
寂しくないよう、パートナーとして犬を飼いました。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの「ルース」です。
 物心ついた時から、家には犬がいました。
スピッツ、そしてシェパード、柴しば犬と。すべて外で飼っていたので、
室内犬と暮らすのが、小さい頃からの夢でした。
 ルースは、とても賢く、優しく美しい犬でした。
私が明け方まで曲を作っている時は、ソファの上でうたた寝しながら待っていて、
仕事から帰ると片時も離れず、ひざの上で甘えていました。
当時は、レコーディングで毎春イギリスに2~3週間行ったり、
コンサートツアーで家を留守にすることが多かったりしたため、
よそに預けることが多く、寂しい思いをさせてしまいました。
荷物を詰めて置いてあるスーツケースをじっと見て、考えこんでいたルースの姿を思い出します。
 34歳の時に結婚をして(5年間ですけどね)娘が生まれ、
ルースと2人(?)で生きていくつもりだったマンションに家族が増えました。
しかし、産後の体調が良くなかったこともあり、
ルースを実家に預けなくてはなりませんでした。
 その後、娘の4歳の誕生日に、
チワワの「ハッピー」も飼い始めたのですが、翌年、娘と2人で生きていくことを決意。
名字が変わる微妙な時期に、娘を穏やかにのびのびと育てられるようにと、
「えいやー」と、広い庭のある郊外の一戸建てに引っ越しました。
 しかし、ペット不可の物件だったため、
ハッピーもまた、実家に預かってもらうことになりました。
 先住犬のルースにしつけられて、ハッピーはお利口になり、
両親にもとてもかわいがられて育ちました。
泥棒が侵入しようとした時、吠ほえて撃退したこともあったんですよ。
 娘が小学2年生になる時、都内に戻り、
ルースとハッピーをやっと引き取ることができました。
2匹は、もともとの自分の家に戻ったように、うれしそうに振る舞っていました。
人間より寿命の短い犬にとって、
離れていた時間はとても長いものだったんだろうなあと申し訳なく思いました。
今飼っているりりぃにはそんな思いはさせない、
というのが、家族全員の暗黙の了解になっています。
 りりぃが1歳になる前に、一緒に電車に乗って、
ペット連れで泊まれる山梨県の河口湖近くのホテルにも旅行しました。
ハッピーやルースにしてあげられなかったことをたくさんしてあげたい……と思っています。
おかむら・たかこ
 シンガー・ソングライター。1962年、愛知県生まれ。82年に「あみん」としてデビューし、85年にソロ活動を開始。今月27日には、11月以降に取り壊される渋谷公会堂(東京)で、コンサート「T’s GARDEN~渋谷公会堂 FINAL~」を行う。

東京都内で(池谷美帆撮影)


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